禁煙外来とは

喫煙は体にとって「百害あって一利なし」です。
以前大ベストセラーとなった「禁煙セラピー」(アレン・カー著)という本でも、「喫煙の利点などひとつもない!」(第21章 喫煙の利点より)と書かれています。
喫煙はなぜいけないのか?
タバコ煙の粒子は非常に小さいため、肺の最も奥にあたる肺胞にまで容易に到達します。その大きさは花粉やPM2.5よりも小さいです。そして5000種類以上の化学物質と70種類の発がん性物質が含まれています。その結果、多くの影響を体にもたらすことになります。
危険因子ごとにみると、喫煙は全世界での死亡原因の第2位とされています(2009年)。WHOは世界で年間510万人が喫煙により死亡していると発表しています。

喫煙の害としてガンは有名ですが、呼吸器科医としてはもっと知ってほしい病気があります。それはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という病気です。聞き慣れない方も多いかもしれませんが、肺気腫と言えば聞いたことがある人も増えると思います。喫煙により、肺胞構造が壊れ、気道が細くなった結果、徐々に呼吸ができなくなるイメージです。進行する労作時の呼吸困難や慢性的な咳や痰を生じます。病院や街中で酸素ボンベを引っ張って歩いていらっしゃる方を見かけたことはありませんか?人によっては慢性呼吸不全にまで至り、在宅酸素を導入することになります。
美容への影響もあり、皮膚のしわやシミが増えるとされています。また、非喫煙者と比べて交通事故による死亡のリスクが1.54倍高いと言われています。火災もそうです。出火原因別で「たばこ」が1位です。タバコで多くのものを失っていることがわかります。
タバコは喫煙者本人だけでなく、まわりの大切な人にも影響を与えてしまいます。いわゆる受動喫煙です。日本における受動喫煙による死亡者数はなんと年間約15,000人と推計されています。
禁煙をすると何かいいことあるの?
まず、禁煙による体の変化をみてみましょう。


ほかにも
- 「味覚や嗅覚が良くなり、食事をおいしく感じるようになる。」
- 「肩身の狭い思いをしなくてすむようになる。」
- 「タバコ臭さを気にしなくてすむようになる。」
- 「タバコによる出費がなくなり、他のことにお金を使えるようになる。」
- 「運動時の息切れや慢性的な咳や痰が軽くなる。」
- 「タバコの火の不始末の心配が不要になる。」
- 「喫煙できる場所を探し回らなくて良くなる。」
- 「まわりの人の受動喫煙の害をなくすることができる。」
ぱっと思いつくだけでも、こんなにでてきます。
どうですか?良いことばかりでなんだかワクワクしてきませんか?
ニコチン依存症
下図のように、ニコチン依存症では脳がニコチンに支配された無限ループ状態に陥っています。

ぜひ一度、ニコチン依存症チェックテストで、チェックしてみてください。
5点以上でニコチン依存症と診断できます。

正しい禁煙の仕方
禁煙をするうえで一番重要なことは、「タバコを一気にやめる」ということです。 ①本数を減らす、②軽いものに変える、③新型タバコに変える、は残念ながら誤った禁煙方法です。
ニコチン欠乏を緩和する(脳が満足する)ために必要なニコチンの量はどの喫煙者でも約1mg程度とされ、無意識に1回の喫煙でニコチンを1mg程度摂取するよう調整しているのです。いくら本数を減らしても、軽いものに変えても、結局は満たされるような吸い方をしてしまうと言われています。
また近年、新型タバコ(加熱式タバコ)が急速に広がっていますが、
「従来のタバコに比べて健康リスクが少ない」
「煙が少ないから受動喫煙の危険がない」
などの誤った認識がされているようです。確かにタールは削減されていますが、ニコチンやその他多くの有害物質がやはり含まれています。さらに、販売開始からの年月が浅いため、長期使用に伴う健康影響も明らかになっていません。また新型タバコは煙が見えにくいだけで、従来のタバコによる見える煙と同様に、大量の有害物質を呼出しています。そのため、日本呼吸器学会からも「いかなる目的であっても、その喫煙や使用は推奨されない」との提言が出されています。
禁煙外来のご紹介
禁煙外来は禁煙チャレンジの心強い味方です。どうしても自力で禁煙する自信がないという方はぜひ禁煙外来を利用してみましょう。
禁煙外来のメリットは、
- 医療スタッフによる見守りがある
- 禁煙補助薬を処方してもらえる
- 禁煙補助薬使用による副作用の対応をしてもらえる
ということです。
禁煙補助薬を使用すると、ニコチンの禁断症状が軽くなるため、より楽に禁煙を達成できるとされています。
ちなみに医療機関から処方される禁煙補助薬として、
- ニコチンパッチ(商品名ニコチネルTTS、貼り薬)
- バレニクリン(商品名チャンピックス、飲み薬)
がありますが、現在バレニクリンは出荷停止されており、処方することができません。ニコチンパッチのみの処方となります。
禁煙外来は全5回、12週間で終了となります。
- 1回目:初回
- 2回目:初回から2週間後
- 3回目:初回から4週間後
- 4回目:初回から8週間後
- 5回目:初回から12週間後
なお、禁煙外来は以下の①~③の全てを満たす方が、保険診療による禁煙外来を受けることができます。
- 直ちに禁煙しようと希望し、禁煙治療を受けることを文書により同意している。
- ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断される(TDS5点以上)。
- 35歳以上の方の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上である。
(35歳未満の方は、喫煙本数や喫煙年数にかかわらず対象となります。)
(ブリンクマン指数計算例:1日喫煙本数20本、喫煙年数30年の場合→20×30=600となります。)
初回
- まず禁煙の意思がしっかりあるかを確認します。
- 呼気中一酸化炭素濃度を測定
- お話を聞きながら禁煙のアドバイス
- 禁煙宣言書にサイン
- 最後に、患者さんにあった禁煙補助薬を処方して終了となります。
2回目以降
- 禁煙が達成できているかを確認します。
- 呼気中一酸化炭素濃度を測定
- 禁煙補助薬で副作用が出ていないか
困っていること、気になっていることがないか
などを確認し、継続・修正をしていきます。
初回から12週間後の5回目の外来で、禁煙外来卒業となります。
費用は、保険診療(3割負担)で禁煙外来全5回で約13,000円程度(ニコチンパッチを使用)となります。(使用する薬剤や副作用対策などで追加処方した薬剤がある場合などはこの限りではありません。)
ニコチンパッチ
禁煙補助薬の使用で禁煙成功率は上がるとされています。
ニコチンパッチは貼付薬です。皮膚に貼ることで経皮的にニコチンを体内に入れます。タバコからではなく、貼付薬からニコチンを補給することで、ニコチンの離脱症状を起こさずに喫煙習慣からの脱却を図ります。そして、次にニコチン補給量を段階的に減量していくことで、ニコチン依存から徐々に離脱していくというものです。
パッチによる治療期間は原則8週間です。(10週間を超えて継続投与しないことになっています。)
通常の治療スケジュールは、
- 最初の4週間 ニコチネルTTS30
- 次の2週間 ニコチネルTTS20
- 最後の2週間 ニコチネルTTS10
といった感じで、段階的に減量していきます。
喫煙していた本数が多くないときはニコチネルTTS20から開始することもあります。
ここで注意点。
①ニコチンパッチを使用できない人
「妊婦、授乳婦、不安定狭心症、急性期の心筋梗塞(発症後3ヶ月以内)、重篤な不整脈、経皮的冠動脈形成術直後、冠動脈バイパス術直後、脳血管障害回復初期、本剤の成分に過敏症の既往歴がある場合」こういった方は使用できませんのでご了承ください。
②副作用
主なものとして、
- 貼付していた部位の皮膚の炎症
(⇒毎日貼付する部位を変えることで予防するようにします。) - 不眠
(⇒どうしても不眠になってしまうときには、就寝前に剥がすようにします。) - 嘔気などの消化器症状
などがあります。
これまでタバコからニコチンを摂取していた量よりも、ニコチンパッチからの摂取量のほうが多くなると、消化器症状といった副作用が出やすくなります。副作用については禁煙外来で適宜対応していきますので、ぜひご相談ください。
最後に・・・
わたしたち呼吸器内科医にとって、タバコは憎き相手です。1人でも多くの人が禁煙を達成できることを心から願っています。
当院では、呼吸器専門医として、禁煙を全面的に応援しています。禁煙外来にぜひお越しください。またこれまで喫煙してきたことによる呼吸器系への不安をお持ちの方もぜひご相談ください。
ブログでは、ここに書ききれなかったもっともっと伝えたい禁煙についての情報をお届けしています。ぜひご覧ください。